ホームページ制作で一番時間がかかるのは「原稿」ではありません!企業サイト制作で止まりやすい理由

ですが実際の制作現場では、意外なところでプロジェクトが止まることがあります。
それが「原稿」です。
ただし、単純に文章を書く作業が大変という話ではありません。
多くの場合、本当に時間がかかっているのは「会社の言葉を決めること」です。
地元企業のホームページ制作でも、ここで足踏みするケースがよく見られます。
原稿が遅いのではなく「言葉が決まらない」
言葉を決めるというのは、抽象を言語化することです。
私たちは義務教育の中で言語化の訓練を受けていますが、だからといって誰もが簡単に言語化できるわけではありません。
会社というものは概念であって、実際に人格があるわけではありません。
そのため「会社とは何か」を説明しようとすると、どの視点から語るのかという前提を決める必要があります。
例えば、社長が考える会社と、社員が考える会社は少し違うことがあります。
どちらも間違いではありませんが、どの視点で会社を説明するのかを決めないと、言葉はなかなかまとまりません。
しかし、この前提を決める作業は意外と時間がかかりますし、関係者全員の総意で決めるのも簡単ではありません。
その結果、思考を後回しにしてしまうのも自然なことだと思います。
とはいえ、その定義を制作会社が決めてしまうわけにもいきません。
結果として「会社とは何か」という問いを、関係者それぞれが考える必要が出てきます。
よくある例として、「未来を作る」「社会に貢献する」といった言葉があります。
これ自体が悪いわけではありませんが、広告業界の文脈ではよく使われる表現でもあります。
そのためユーザーから見ると、「どこにでもある会社」という印象になってしまうこともあります。
別の例として、外的なラベルを用いる方法もあります。
例えば当社を例にすると、
- Before
- 「千葉県のWeb制作会社である」
これは間違いではありませんが、同じ表現に当てはまる会社は他にも多くあります。
そこで少しだけ情報を足してみます。
- After
- 「広告制作や映像制作も自社で行える千葉県のWeb制作会社である」
さらに従業員規模を加えると、
- Before
- 「広告制作や映像制作も自社で行える千葉県のWeb制作会社である」
- After
- 「広告制作や映像制作も自社で行える少数精鋭の千葉県のWeb制作会社である」
といった具合です。
このように言葉を少しずつ足していくことで、会社のイメージが具体的になっていきます。
「未来を作る会社」ではなかなか絵が浮かびませんが、「広告制作や映像制作も自社で行える少数精鋭の千葉県のWeb制作会社」であれば、少しずつ会社の姿が想像しやすくなります。
このように、イメージとしての絵が描けるようになるまで属性を整理していくことで、企業という概念は徐々に鮮明になっていきます。
地元企業でよくある原稿のやり取り
当社が実際にヒアリングする中で、よくあるやり取りがあります。
社長「うちは特別なことはしてないよ」
担当者「普通の仕事しかしていません」
というものです。
特別なことをしていない、普通のことしかしていない。
これは業界の中では確かに「普通」のことかもしれません。
しかし、その「普通」は業界内の基準であって、一般の人が同じように理解しているとは限りません。
例えば建築業界では、地盤調査や地盤改良といった作業は当たり前の工程です。
しかし一般の方がその工程を詳しく知っているかというと、意外と知られていないことも多いでしょう。
さらに、それをどのような方法で行っているのかまで理解している人は、さらに少なくなります。
制作会社が知りたいのは、その「当たり前の仕事」を、実際にはどのように行っているのかという点です。
実際、完全に代替不可能な事業を行っている会社はほとんどありません。
多くの企業は、ある程度代替可能な事業の中で活動しています。
しかし、その仕事を・・・
・どの地域で
・どのくらいの時間をかけて
・どのような方法で
行っているのかによって、会社の特徴は少しずつ見えてきます。
独自性ではなく、傾向をつけると強くなる
例えば、安全点検という行為を考えてみます。
安全点検そのものは、多くの会社が行っています。
しかし、その回数が多かったり、チェックの工程が丁寧であったりすると、「安全性への配慮が強い会社」という傾向が見えてきます。
これは必ずしも独自性ではありません。
しかし傾向が積み重なることで、会社としての方向性が見えやすくなります。
年間降水量が多い地域を「多雨地域」と呼ぶように、ある特徴が積み重なることで、その地域の性質が見えてくるのと似ています。
会社についても同じで、仕事の積み重ねの中にある傾向を整理することで、企業の輪郭は少しずつ見えてきます。
「シンプルにお願いします」が難しい
ホームページ制作では「シンプルに」「分かりやすく」といった言葉がよく使われます。
ただ、この言葉は人によって少しずつ意味が違うことがあります。
社長が思う「シンプル」と、デザイナーが思う「シンプル」は、同じ言葉でもイメージが異なる場合があります。
哲学者ウィトゲンシュタインは、言葉の意味は辞書の中にあるのではなく、人がどのような生活の中でその言葉を使っているかによって決まると考えました。
例えば社長が思う「シンプル」は、読みやすさや情報整理を指す場合もあります。
一方、デザイナーが思う「シンプル」は、装飾を極力減らしたミニマルなデザインを意味することもあります。
つまり、同じ言葉でも立場や経験によって意味が少しずつ変わります。
ホームページ制作で起こるイメージのすれ違いは、こうした言葉の違いから生まれることも少なくありません。
日常生活でも似た例があります。
信号機の「青」は、実際には緑色に近い色ですが、多くの人はそれを青と呼びます。
空の青、海の青、信号の青。
同じ「青」という言葉でも、それぞれ少しずつ色味は違っています。
こうしたズレを減らすためには、参考サイトや具体的な画像など、実際に視覚で確認できる資料を共有することが効果的です。
言葉だけで説明するよりも、イメージの共有がしやすくなります。
ホームページ制作は「翻訳」の仕事でもある
ホームページ制作というと、デザインや開発の作業をイメージされることが多いと思います。
しかし実際には、それらは手段であり、最終的な成果物としてホームページが出来上がります。
では、その設計図は何かというと「仕様書」です。
そして、その仕様書を作るための材料になるのが原稿です。
原稿 → 設計図 → デザイン・開発 → ホームページ
という流れになります。
この設計図を作る役割が、一般的にディレクターと呼ばれる職務です。
ディレクターは、原稿という日常言語を、制作工程で扱える設計情報へ変換していきます。
- 例
- 青とはどのような色なのか
- クリックすると何がどのように開くのか
といった内容を整理し、デザイナーやエンジニアへ渡します。
つまり、原稿の情報量が不足していると、この設計工程そのものが成立しなくなります。
そのためディレクターは、必要に応じて提案を行うことがあります。
ただし、この提案は制作会社側が制作工程を進めるための一般的な提案になることも多く、結果として「未来を作る」などの無難な表現になる場合もあります。
もし、より具体的で、その会社の実態に近い内容にしたいのであれば、ヒアリングや整理に時間をかける必要があります。
これが提案費用やディレクション費用と呼ばれる部分です。
原稿が整うと制作は一気に進む
ここまで述べてきたように、原稿は設計図を作るための素材です。
そのため、原稿が整うと制作は一気に進みやすくなります。
逆に、曖昧な仕様のまま進めてしまうと、デザイナーもエンジニアも修正を前提とした作業になります。
結果として作業時間は増え、設計も保守的になりやすくなります。
そうすると、多くのWebサイトに見られる「それらしい形」に落ち着いてしまうこともあります。
では、どうすればよいのでしょうか。
重要なのは、プロジェクトに関わる人が同じイメージを共有できるだけの具体性を、原稿の段階で持たせることです。
これは決して簡単な作業ではありません。
だからこそ、関わる人数を必要以上に増やさないことも一つのポイントになります。
例えば、ディレクターと担当者が1対1で話せる環境であれば、共通認識は作りやすくなります。
一方で関係者が増えるほど、意見の整理が難しくなることもあります。
ホームページ制作を発注する際には、最終的に責任を持つ担当者を明確にすることも大切です。
責任の所在がはっきりすると、原稿の内容も具体的になりやすく、その結果として仕様書の作成もスムーズになります。
少し厳しく聞こえるかもしれませんが、これは特別な話ではありません。
社会人として仕事を進める上では、ごく自然な責任の取り方なのだと思います。
まとめ
ホームページ制作は、デザインやプログラムの作業だけで成立するものではありません。
その前段階として「会社をどう言葉にするか」という整理の工程があり、ここが整うことで制作全体は驚くほどスムーズに進みます。
もし、ホームページ制作を検討されていて「何を書けばよいか分からない」「会社の強みをどう言葉にすればよいか迷っている」という場合は、制作会社とのヒアリングの時間を少しだけ丁寧に取ってみてください。
私たちも制作のご相談を受ける際には、単にデザインや機能の話だけではなく、「会社の言葉を整理するところ」からお手伝いしています。
原稿づくりの段階で方向性が見えると、その後のホームページ制作は驚くほど進みやすくなります。



