Mic Check ONE! TWO! 制作会社のマイク選び
以前、とある団体の会員様向けに動画の撮影方法に関するセミナーを開催させていただきました。
スマートフォンを使ったSNSへの投稿が主題だったので仕方ないですが、画角やカメラワークについての質問はあっても『音』に関する質問は全くと言っていいほどありませんでした。
同じ映像でもしっかりと録音するとクオリティが格段にアップしますので、皆様に少しでも『音』に興味を持ってもらうべく今回は弊社で普段使っているマイクについてまとめてみました。
(サムネの意味がわかったアナタはきっと40代以上でしょう)
なんでマイクを変えるとそんなに変わるの?
極端な事を言ってしまうと、マイクを音源に対して最適な距離に設置出来ればどんなマイクでも音は良くなります。遠くにあるマイクより口元にあるマイクの方がしっかりと音が拾えますよね?
逆に、どんなに高品質なマイクを使っても最適な距離に設置できなければ良い音を録る事はできません。
なので私たちが業務で音を録るときは状況に応じて様々な種類のマイクを使い分ける事でその場に合った最適な録音を行っているのです。
ハンドマイク
ほとんどの人が「マイク」と言われて思い浮かべるのはこのタイプじゃないでしょうか?
カラオケとかスピーチとかで見慣れたデザインですね。
この丸い頭にアミアミが付いているタイプは主に「ボーカルマイク」と言われその名の通り歌を歌う時に使うものです。
他にも「インタビューマイク」というタイプもあってテレビの街頭インタビューとかニュース取材で使われています。
このタイプの良い点はマイクとクチの距離を自由に変えられる事と、マイクの扱いに慣れていない話者でも扱い易い点ですね。
【メリット】
・口元まで近づけられるので余計な音が入りづらい
・手に持っているので録りたい方向を容易に変えられる
・誰でもマイクだとわかる(←意外と重要)
【デメリット】
・手に持たないといけない(もしくはマイクスタンドが必要)
・映像にマイクがモロに映る
【使用頻度】
★★★★
アミアミの部分を握ったり、直接クチを付けるのはやめましょう
音質は悪くなるし、ノイズは乗るし、汚れるし・・・良いことが何一つないね
ワイヤレスピンマイク
人の声を録るならこれが一番カンタンです。話者の胸元にマイクを付けて音声を集音し無線でカメラやミキサーに飛ばします。
基本的にはクリップで服に挟んで装着しますが、映画やドラマでマイクが見えちゃいけない時は服の中に貼って仕込んだりもします。
このタイプの良いところは話者がカメラから離れていたり、カメラ以外の方向を向いていてもキチンと声を収録できる点です。
【メリット】
・録り逃がしほとんどがない
・小さいのでマイクが映っても目立たない
・両手が空く
・演者さんが動き回っても音が録れる
【デメリット】
・音質はそこまで良くない
・狙った音だけでなく、周囲の余計な音まで録ってしまう
・服や手が触れて雑音が入りやすい
【使用頻度】
★★★★★
ちなみにピンマイクには有線の物もあります。
話者が座ったまま動かないインタビューとか、電波状況が悪い時はこちらが確実です。
「はじめまして」と言いながら入ったお店の店員さんの胸元にピンマイクが装着されている・・・
テレビ業界の様式美ですな
ショットガンマイク
一般的には見慣れない形かもしれませんが映像制作的にはこれがマイクの王道で、とても良い音が録れます。
撮影シーンで長い棒を演者さんのそばまで突っ込んでるシーンを見たことがあるかもしれませんが、あの棒の先に付いてるのはコレです。
マイクの先端が向いてる音だけを狙って録れるので、人の声から環境音まであらゆる用途で使えます。
長さも色々あって、長いものほど遠くの音が録れるようになっていて、音源まで近づく事のできないスポーツの現場だとビックリするくらい長いものに出会えます。
ちなみにこのマイクをハンドマイクのように手で直接持つとめちゃくちゃノイズが入るので、必ずショックマウントと呼ばれる振動を抑える台(?)に乗せて使いましょう。
ピンマイクを使わずにガンマイクだけで声が録れたら一流の音声マン・・・なんて言われたり
【メリット】
・録りたい音を狙って録れる
・最適な距離に設置すると音質が良い
【デメリット】
・良い音を録れるスポットが狭いので扱いが難しい
・狙いを外すと急に音質が悪くなる
【使用頻度】
★★★★★
ポケモンと言ったらピカチュウ!
マイクと言ったらヨンイチロク!
グースネックマイク
その名の通り首の部分が “グース=ガチョウ” の首のように自由に曲げられるマイクです。
お固めな会議や公的機関でよく使われています。
話者が入れ替わり立ち変わるような演台や、個々にピンマイクを付けられないような場合に最適です。
どこに向かって話せばいいか一目で分かるのも良いですね。
【メリット】
・話者に合わせて角度調整が容易
・映り込んでも視覚的にあまり邪魔にならない
【デメリット】
・話者の姿勢や顔の向きですぐに音を外してしまう
【使用頻度】
★★
バウンダリーマイク
テーブルや地面に直接置いて使います。大きい会議室のテーブルの真ん中にもよく置いてありますね。
このマイクもその名の通りでテーブルや地面に”バウンド”した音を録っています。
複数人の中で誰が喋るのかわからない場合や、コンサートなどの広範囲の音を録るのに使います。
【メリット】
・広範囲の音が録れる
・空間全体の音を録れる(雰囲気重視)
【デメリット】
・置いてある机や地面を伝わる音が全て入ってくる(机をコンコンしたり、足をパタパタされると悲劇)
・狙った音だけを録るのは無理ゲー
【使用頻度】
★
マッチドペアマイク
ここまでのマイクは基本的に「モノラル」といって一つの音しか録れません。
なので単純にマイクを2本使って、右と左の音を別々に録ると「ステレオ」になります(厳密に言うとちょっと違いますが…)
他のマイクも2本使えばステレオにはなるのですが、左右で違うマイクを使うと微妙に音質が変わったりします。その点マッチドペアマイクはメーカー側で特性が合っているものを2本揃えて出荷してくれているので左右での差が出にくいのです。
ちなみに1本のマイクでステレオを録音できるマイクもあります。
【メリット】
・左右のスピーカーから別々の音が鳴らせるので臨場感が出る
【デメリット】
・マイクが2本だとケーブルも2本必要(カメラによっては非対応)
・左右を繋ぎ間違えると事件
【仕様頻度】
★★★
ちなみにカメラへの入力はL(左)が1ch、R(右)が2chっていう暗黙の了解があるわね
ケーブル色でいうとL(左)が白もしくは青、R(右)が赤ってのが一般的だね
【番外編】バイノーラルマイク
最近流行りのASMRやVR(バーチャルリアリティ)で使うマイクです。
人間の頭の形を模したリアルな物から、耳だけ模した物、4つのマイクで前後左右上下360度の音を収録する物まで様々なタイプがあり用途に応じて使い分けます。
特定の音だけでなく空間全体の音を録音できるので、密閉型のヘッドホンで聞いて目を閉じると本当にその場に居るような感覚になります。
ちなみに人間が普段耳で聞いている音は頭や耳の中でぶつかってから鼓膜に達しているので、頭が無いマイクでは本当にリアルな音は録れないそうです。
残念ながら現状弊社では所有しておらず、個人的に非常に興味があるのですが今のところ業務で使う用途がないので我慢しています(欲しい) → ポチッとな
ん?最後の一言が気になるわね・・・
ヤバい!ヤツは買う気だぞ!
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回はあくまでも弊社が普段使用しているマイクを中心にご紹介しましたが、これ以外にも様々な種類のマイクが存在しますので興味がある方は色々と調べていただくと奥深い世界なので面白いと思います。
お値段も千円くらいで買える物から100万円を超える代物まであります・・・完全に沼です。
ですがいくら高いマイクを買っても用途や使用方法が合っていなければ本領発揮できませんので、
まずは安い物で試して自分の用途に合ったタイプを探していただくのが良いと思います。
最後に、どのマイクも風に吹かれると「ボボボボボ」という風切り音が入ります。
ですので屋外で使う時は必ずウインドジャマーというモフモフした毛のカバーを使います。
運動会の撮影でホームビデオの音声が「ボボボボボボ」ってなって後で家族から怒られたお父さんも多いと思いますが、カメラ内蔵マイクを使う時でもマイク部分にフェイクファーを貼ると若干マシになりますので良かったらお試しください。
それではまた。