レビュー

トモダチコレクション わくわく生活 × AI|再現ではなく編集する【ゲームレビュー】

トモダチコレクション わくわく生活 × AI|再現ではなく編集する【ゲームレビュー】
2026年の4月16日、Nintendo Switchで「トモダチコレクション わくわく生活」が発売した。
前作の3DS版「トモダチコレクション 新生活」の発売(2013年)から、10年以上の歳月を経た新作である。
今回は本作におけるレビューおよび、AI活用の利点について述べることとする。
ゲーム
トモダチコレクション わくわく生活
トモダチコレクション わくわく生活
Nintendo Switch、Switch2専用ソフト
トモダチコレクションシリーズの最新作
4/5 総合評価
キャラメイク
4/5
やりこみ
3/5
気軽さ
5/5
システム
4/5

レビュー

まずは、レビューから述べる。
最初は住民のリスト表示についてだ。

Yボタンより、開ける住民のリストは
{1人目, 2人目, ~ 5人目} といった形で表示される。
さらにその画面から開ける全表示は、12人まで表示できる。

つまり、Yボタンを1回押すことで => 5人表示
さらに、Yボタンを1回押すことで => 12人表示

ということになる。
ここまででボタンを押した回数は2回だ。

全表示の12人を目安にすると、
最初のリスト {1,…,5} をPとして
PからRボタンで {6,…,10}
PからLボタンで {11,…15} となる。

つまり、16人目以降になると途端に管理が面倒になるのは理解できるだろう。
15人までであれば、住民リストから1回のボタン操作で探すことはできるが、
16人以上になると特定のキャラクターを検索するときに2回ボタンを押す可能性があるからだ。
ここから生じる懸念として、島の拡張のためには35人以上の住民を登録する必要がある。

島の拡張のためには35人以上必要

ここから私は、最大15人での管理を行う必要があると判断した。
故に追加で20人の住民を作成しなければ、島の開放は行えない。
1人あたり、引越しには3000円の費用が発生するから、6万円の出費だ。

問題はその追加作業である。
バッチ操作が出来ないから、一人ずつ、「島拡張の役割」のために存在する住民を登録する。
彼らには人格の投影がないし、トモダチでもない。
「あ」という名前、性格や特徴も変わらない、同じ見た目の存在を作るのである。
役割を終えれば、彼らに引越し代を払い、お別れだ。

この操作は、友人関係の構築ではない。
条件達成のための人数調整である。
人格は不要であり、識別子さえあれば成立する。
名前が「あ」であっても問題はない。
役割が終了すれば、コストを支払い、関係は終了する。

まるで現実世界だ。

ここまで述べたところで、
そのインターフェースが大人数の管理に適しているか?
適していないのなら、住民数が増えることに開放される要素のあり方はどうか?
私はそのような疑問を感じた。

もっとも現場では制約も存在するから、その判断の是非について外部の私はアレコレと否定するつもりもない。
ただ漠然と身体がそう感じたことを、理性が意味をつけたのである。
以上でレビューは終了となる。

住民制作におけるAI活用

さて、ここからはAIの利用について述べていくことにする。
実際のところ、ソフト側から特定のAPIに接続してプロンプトを打ち込むなどは出来ない。
ここでの活用というのは、人物の顔や性格、口癖などを決めるにあたり、その判断材料を主体の記憶だけで考えるのは難しいということである。

例えば、人物の顔の作成。
Miiという仕様上、ある程度のパーツは用意されているものの、基本的には左右対称な顔が生まれる。
つまり、人物の顔の再現というより記号として構成することになる。
人の記憶というのは非常に曖昧で、例えば数年会っていない人物は忘れてしまうし、親であっても忘れてしまう。
その曖昧な顔を、特定のパーツで記号化していくのは骨が折れるし、出来上がりによっては感情の投影も難しいのである。

では仮に、見本があればどうか?
見本があればベースは作られるし、それを手直しすれば良い。
AI生成における推測は基準点の作成に有効になりうると私は判断した。

試しに著者はソクラテスを生成してみた。
ソクラテスは古代ギリシャの哲人だが、彼の登場は弟子プラトンや同年代の記述内で閉じている。
彼自らが何らかの本を書いたわけではないし、自叙伝もない。
あくまで想像で描くしかないのである。

ソクラテスのイメージ

一方で、個が持ちうるソクラテスの情報というのは、蓄積されたデータ群と比べると僅かだ。
それを調べるにも膨大な時間を要求されるだろう。
よって、私はAIを用いて、ソクラテスのMiiの基準点を作ることにした。

顔の作成

特定の著名人であれば、その人物名を基準としてプロンプトを入力すればいい。
ChatGPTやGeminiなど外部の補助に相談すると良いだろう。

まず私は、AIに対して「ソクラテスの身体的特徴を、Miiのパーツで再現可能なレベルまで抽象化して言語化せよ」と指示を出した。
ここで重要なのは、単に「ソクラテスの顔を教えて」と聞くのではなく、「Miiの限られたパーツ群で表現するための優先順位」をAIに抽出させたことである。
AIから返ってきた回答は、以下のようなポイントに集約された。

1.突出した前頭部(禿げ上がった広い額)
2.低く、横に広がった獅子鼻
3.厚みのある唇と、それを縁取る豊かな髭
4.思索に耽るような、やや重たげなまぶた

これらは、プラトンの著作などで語られる、外見の特徴をAIが膨大なデータベースから解析・要約した結果である。
個人の記憶では「なんとなく髭の老人」で止まってしまうイメージが、AIというフィルターを通すことで、Miiのパーツ選びに直結する「記号の箇条書き」へと変換されたのだ。

この「基準点」があることで、制作の迷いは大幅に軽減される。
AIが示した優先順位に従い、最も特徴的な「鼻」と「額」を固定し、残りのパーツを微調整していく。
このプロセスは、ゼロから似顔絵を描く作業よりも、むしろ「正解のないパズル」のピースを埋めていく作業に近い。

こういった行為が許容されるのは一部のケースである。
肖像権の概念が存在しない歴史上の人物や、パブリックドメインに近い存在であれば、AIによる視覚的推測は強力な補助線となる。
しかし、これが生存している特定の個人や、宗教的に極めて神聖視されている対象であれば、話は別だ。

性格の生成

「トモダチコレクション」における住民の性格は、4つの評価軸によって決定される。
各軸は、以下の条件を満たす集合xの要素として定義できる。

x = { x | x ∈ Z, -4 ≤ x ≤ 4, x ≠ 0 }

行動: -4(ゆっくり) 〜 4(きびきび)
言葉づかい: -4(やんわり) 〜 4(きっぱり)
表情: -4(クール) 〜 4(ゆたか)
考え方: -4(マジメ) 〜4 (お気楽)
はっきりいって: -4(常識人) 〜 4(個性的)

これらの数値を出せばいい。
例えば、ソクラテスであれば下記のような数値となった。

行動:-3 〜 -4(ゆっくり)
言葉づかい:4(きっぱり)
表情:-2 〜 -3(クール)
考え方:-4(マジメ)
はっきりいって:4(個性的)

AIが導き出したソクラテスのパラメーターは、「行動」「言葉づかい」「考え方」が極端な値を示した。
これは、彼の「徹底的な思索」という記号を数値化したものである。
実際、彼は当時のアテナイで「街のあぶら虫」とあだ名されるほどの「個性的(型破り)」である。
こういった数値の算出は、ゲームの枠だけでなく、歴史上の偉人などの一面を垣間見れる。

口癖の生成

本作では住民に口癖を設定できる。
この口癖というのは非常に難しい。
入力項目が多いこと、そして口癖の傾向は認知し難いことである。

決めていきたいのは以下の10個
例は「、」区切りとなる。

1.話し始め
例:あっ、え〜、えっと、

2.話し終わり
例:とか…、知らんけど、だにゃん

3.言いそうな言葉
例:絶好調!、よっしゃ〜!、やばいって!

4.うれしいとき
例:うれしい!、イェーイ!、幸せだなぁ!

5.悲しいとき
例:かなしい….、もうダメ….、ガーン!

6.怒ったとき
例:許せん!、ムカッ!、腹立つ〜

7.あいさつ
例:どうも、ハーイ、元気?

8.寝言
例:あたしがアイドル?、ウヒヒヒ、もう食べられません

9.海に叫ぶことば
例:君が好きだー!、あたし悪くなーい!

10.食事前のあいさつ
例:美味しそう!、腹減った、食うぞ〜

実際にソクラテスの口癖の基準を生成してみたところ、下記のようになった。

話し始め:ところで、もしや、思うに、
話し終わり:ではないか?、いかがかな?、知らんけど
言いそうな言葉:無知の知、善く生きよ、吟味せねば
うれしいとき:魂が喜ぶ!、真理だ!、知の極み!
悲しいとき:無知ゆえに…、嘆かわしい、毒杯を…
怒ったとき:欺瞞だ!、無知を恥じよ、不合理なり
あいさつ:調子はどうだ、美徳とは何か、今日も無知
寝言:悪法も法か、イデアが…、むにゃむにゃ
海に叫ぶことば:お前自身を知れ!、対話しようぜ!
食事前のあいさつ:身体への栄養、毒ではないな?、頂こうか

「話し終わり」に「ではないか?」を置くことで、住民の日常的な独り言さえも、プレイヤーへの問いかけ(ソクラテス的問答法)に変質させることができる。
実際、これらを手作業で吟味し、考えることは負担であるから、このような基準点を持つことで思考コストを軽減できる。

AI生成におけるメリット

人は何かしらの価値基準を含んだ上で住民を作っていくことになる。
そこにはバイアスという偏りも生じてしまう。

人は必ず偏る。
AIもまた、別の形で偏っている。
違いは、その偏りが個人の記憶か、集積された記号かという点だけだ。
個人の観念に捉われず、リアリティの再現という意味では、AIを活用した構築は有用だろう。

著者自身の話になるが、私には「トモダチ」がいない。
故に、私の島では歴史的な著名人が基本的に存在することになる。
ゲームと現実の乖離を見るためには、ある程度のリアリティが必要である。

例えば、ショーペンハウアーとヘーゲルが同じ屋根の下で朝食を囲み、互いに毒を吐き合う光景。
その不協和音こそが、記号化された哲学を「生きた隣人」へと昇華させるのである。

まとめ

トモダチコレクションは、現実の関係性を取り除いたシミュレーションだ。
プレイヤーという主体は、彼らの生活に必要な時だけ参加できる。

箱庭の中に投影された人物像を配置するだけで、物語が自動で構築される。
各々の住民は時折おかしなことを言うし、突拍子もない行動に出ることがある。
だが、それも計算された中での理性的な演出に閉じる。

自分で住民をキャラメイク出来るからこそ、結果の予測もしやすい。
AIによって導き出された「現実的な形相」は、理性の箱庭に不穏な、あるいは滑稽なリアリティを注入する。

トモダチコレクションは、他者を再現するゲームではない。
他者という概念を、扱える形に分解するゲームである。

AIはその分解を補助し、プレイヤーはその断片を組み直す。
そこに生まれるのは、現実の人間ではない。
認識された人間の再構成体だ。
そして、その歪みこそがこのゲームの最も人間的な部分である。